概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエチレンテレフタレート |
| 略記号 | PET |
| IUPAC | poly(ethylene terephthalate) |
| 英語名 | Polyethylene Terephthalate |
| 日本語名・別名 | ポリエチレンテレフタレート、PET樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル、テレフタル酸エチレングリコール重縮合体 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、芳香族ポリエステル、結晶性樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリングプラスチック、包装用プラスチック、繊維用ポリエステル、フィルム用樹脂 |
| 化学式または代表構造 | (C10H8O4)n、代表構造:−O−CH2−CH2−O−CO−C6H4−CO− |
| CAS No. | 25038-59-9 |
| 構造・主成分 | テレフタル酸又はジメチルテレフタレートとエチレングリコールを主原料とする芳香族ポリエステルである。 |
| 主な用途 | 飲料ボトル、食品包装、透明シート、二軸延伸フィルム、ポリエステル繊維、電気電子部品、自動車部品、機械部品、医療包装、絶縁フィルム |
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸又はジメチルテレフタレートとエチレングリコールを重縮合して得られる代表的な熱可塑性芳香族ポリエステルである。透明性、機械的強度、寸法安定性、耐薬品性、ガスバリア性、成形加工性のバランスが良く、ボトル、フィルム、繊維、シート、電気電子部品などに広く使用される。
PETはグレードと加工方法により、非晶性に近い透明ボトル・シート用途、延伸結晶化したフィルム・繊維用途、結晶化制御した耐熱容器用途、ガラス繊維強化した射出成形部品用途に分かれる。一般に、結晶化度が高いほど耐熱性、剛性、寸法安定性、耐薬品性は向上しやすいが、透明性、熱成形性、衝撃性、成形サイクルは変化する。
材料選定では、PETを単一材料として扱わず、ボトル用PET、繊維用PET、フィルム用PET、射出成形用PET、GF強化PET、難燃PET、食品接触グレード、リサイクルPET、PETGなどを分けて判断する必要がある。実使用ではグレード、分子量、IV値、結晶化度、乾燥状態、温度、薬品濃度、接触時間、荷重、応力、成形時の残留応力、加水分解条件を確認する必要がある。
特徴
長所
- 透明性が高く、ボトル、シート、フィルム用途に適するグレードが多い。
- 引張強さ、剛性、耐摩耗性、寸法安定性のバランスが良い。
- 酸素、二酸化炭素、香気成分に対するバリア性が比較的良好である。
- 油、脂肪酸、アルコール類、希酸、一般的な食品成分に対して比較的安定である。
- 延伸フィルムや繊維では、強度、寸法安定性、耐熱性が高くなる。
- 電気絶縁性が良く、絶縁フィルム、電子部品、コネクタ用途に使われる。
- リサイクルの社会実装が進んでおり、ボトル、繊維、シート用途では再生PETの利用が多い。
短所
- 乾燥不足で成形すると加水分解により分子量が低下し、強度、靭性、透明性が低下する。
- 強アルカリ、高温水蒸気、高温水、アミン類では加水分解や表面劣化が起こりやすい。
- 非晶状態では耐熱性が限定され、熱変形、熱収縮、白化に注意が必要である。
- 結晶化しやすいため、厚肉成形品や熱履歴により白化、寸法変化、反りが生じることがある。
- 射出成形では乾燥、金型温度、結晶化制御が重要であり、PBTより成形条件管理が難しい場合がある。
- ケトン、エステル、塩素系溶剤、フェノール類、一部の芳香族溶剤では膨潤、白化、応力割れに注意が必要である。
- 摺動用途では、無充填PET単独ではPOM、PA、PTFE系材料より摩擦摩耗特性が劣る場合がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 非晶性又は低結晶化状態では透明である。結晶化が進むと白色から乳白色となる。GF強化品や難燃品は一般に不透明である。 |
| 耐熱性 | Tgは約70〜80℃、融点は約250〜260℃である。非晶状態では高温寸法安定性に注意し、結晶化品やGF強化品では耐熱性が向上する。 |
| 耐薬品性 | 油、アルコール、希酸、脂肪族炭化水素には比較的良好である。強アルカリ、高温水、アミン、フェノール、塩素系溶剤、ケトン類では注意が必要である。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、延伸ブロー成形、フィルム延伸、繊維紡糸、熱成形、切削加工に使用される。成形前乾燥と結晶化制御が重要である。 |
| 分類上の注意 | PETは包装材料、繊維、フィルム、エンプラの複数領域で使われる。非晶性透明PET、結晶性PET、GF強化PET、PETGは実用特性が異なるため分けて扱う必要がある。 |
構造式

PETは、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸単位と、エチレングリコール単位から構成されるポリエステルである。 主鎖中にエステル結合を持つため、強アルカリや高温高湿条件では加水分解を受けやすい。
芳香環を含むため、剛性、機械的強度、ガスバリア性が高い。 一方、結晶化度によって透明性、耐熱性、寸法安定性が大きく変化する。
| 項目 | 構造 |
|---|---|
| 代表構造単位 | −O−CH2−CH2−O−CO−C6H4−CO− |
| 繰り返し単位式 | (C10H8O4)n |
| 主鎖構造 | 脂肪族エチレン鎖と芳香族テレフタレート構造をエステル結合で連結した構造である。 |
| 官能基 | エステル結合(−COO−)を有するため、加水分解、アルカリ分解、熱劣化に注意が必要である。 |
モノマーまたは構成単位
| 構成成分 | 化学式 | 役割 |
|---|---|---|
| テレフタル酸 | HOOC−C6H4−COOH | 芳香族ジカルボン酸成分であり、剛性、融点、耐熱性、バリア性に寄与する。 |
| ジメチルテレフタレート | CH3OOC−C6H4−COOCH3 | エステル交換法で用いられる原料である。 |
| エチレングリコール | HO−CH2−CH2−OH | ジオール成分であり、エチレン鎖を形成する。 |
共重合体や変性グレード
PETには、透明性、結晶化速度、耐熱性、衝撃性、成形性、バリア性を調整するため、共重合成分や添加剤を含むグレードがある。代表例として、イソフタル酸共重合PET、シクロヘキサンジメタノール共重合PET、グリコール変性PET、ガラス繊維強化PET、難燃PET、リサイクルPETがある。
| 変性・共重合 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| イソフタル酸共重合PET | 結晶化を抑え、透明性、成形性、熱成形性を調整する。 | 結晶性PETより耐熱性や寸法安定性が変化する場合がある。 |
| グリコール変性PET | PETG、PCTGなどの透明コポリエステルとして使用される。 | 通常の結晶性PETとは耐熱性、耐薬品性、結晶化挙動が異なる。 |
| GF強化PET | 剛性、HDT、寸法安定性、機械強度が向上する。 | 透明性は失われ、反り、異方性、工具摩耗、吸湿乾燥に注意する。 |
| 難燃PET | 電気電子部品、コネクタ、絶縁部品に使われる。 | 難燃剤の種類により電気特性、機械特性、規制適合性が変わる。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ボトル用PET | 高透明、延伸ブロー成形用PET | 透明性、ガスバリア性、食品接触用途での実績が多い。 | 高温充填、アルカリ洗浄、熱水条件ではグレード確認が必要である。 | 飲料ボトル、食品容器、調味料容器 |
| フィルム用PET | 二軸延伸PETフィルム | 強度、寸法安定性、耐熱性、電気絶縁性、透明性が良い。 | ヒートシール性は単独では限定的であり、表面処理やラミネートが必要な場合がある。 | 包装フィルム、絶縁フィルム、工業用テープ、ラベル |
| 繊維用PET | ポリエステル繊維用グレード | 強度、寸法安定性、速乾性、耐摩耗性が良い。 | アルカリ減量加工や高温高湿条件では劣化に注意する。 | 衣料、産業繊維、不織布、タイヤコード |
| 非晶性PET | 低結晶化状態の透明PET | 透明性、シート加工性、熱成形性が良い。 | 耐熱性、寸法安定性は結晶化PETより低い場合がある。 | 透明シート、食品トレー、包装材 |
| 結晶性PET | 結晶化を進めたPET | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性が向上する。 | 透明性は低下し、白化することがある。 | 耐熱容器、工業部品、フィルム、繊維 |
| GF強化PET | ガラス繊維を配合したPET | 高剛性、高HDT、低収縮、寸法安定性に優れる。 | 反り、異方性、表面外観、乾燥条件、金型摩耗に注意する。 | コネクタ、リレー部品、電装部品、自動車部品 |
| 難燃PET | 難燃剤を配合したPET | 電気電子部品でUL94 V-0相当を狙えるグレードがある。 | 難燃剤により機械特性、流動性、規制適合性が変化する。 | コネクタ、スイッチ、絶縁部品、端子台 |
| 摺動PET | PTFE、シリコーン、固体潤滑剤などを配合する場合がある。 | 摩擦摩耗特性を改善できる。 | POM、PA、PBT、PTFE系材料との比較評価が必要である。 | 軸受、スライダー、搬送部品 |
| 食品接触PET | 食品包装、飲料容器向けに設計されたグレード | 透明性、清潔感、食品用途での使用実績が多い。 | 国・地域別の食品接触規制、添加剤、再生材使用条件を確認する必要がある。 | 飲料容器、食品トレー、調味料容器、包装材 |
| リサイクルPET | 回収PETを再資源化した材料 | 環境対応、CO2削減、循環型材料として有用である。 | 分子量、色調、異物、臭気、食品接触適合性、ロット差の確認が必要である。 | 繊維、シート、ボトル、成形品、包装材 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | GF強化PET、難燃PET、結晶化PETの成形に用いられる。 | 乾燥不足による加水分解、金型温度不足による結晶化不良、反りに注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、フィルム、パイプ、ストランド、モノフィラメントに適する。 | 溶融粘度、乾燥、厚みムラ、結晶化、冷却条件を管理する。 |
| ブロー成形 | ◎ | 延伸ブローにより透明ボトル、耐圧ボトルを成形できる。 | プリフォーム設計、延伸倍率、結晶化、アセトアルデヒド発生に注意する。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、再生材、特殊成形で利用される場合がある。 | 一般的な量産PET成形では主流ではない。 |
| 真空成形 | ○ | 非晶性PETシート、PETG系シートで食品トレーや透明カバーに用いられる。 | 結晶化による白化、加熱温度、シート乾燥、成形後収縮に注意する。 |
| 熱成形 | ○ | 透明シートや包装トレーに用いられる。 | 通常PETとPETGでは成形温度域、白化、耐熱性が異なる。 |
| フィルム延伸 | ◎ | 二軸延伸PETフィルムとして高強度、高透明、高寸法安定性を得られる。 | 延伸倍率、熱固定、収縮率、表面処理が重要である。 |
| 繊維紡糸 | ◎ | ポリエステル繊維、不織布、産業資材用繊維に用いられる。 | 分子量、乾燥、紡糸温度、延伸条件を管理する。 |
| 切削加工 | ○ | 板、丸棒、摺動部品、絶縁部品の加工に用いられる。 | 発熱、バリ、寸法変化、内部応力、吸湿状態を確認する。 |
| 溶着 | ○ | 超音波溶着、熱板溶着、レーザー溶着などが可能な場合がある。 | 結晶化度、添加剤、着色剤、設計形状により溶着性が変わる。 |
| 接着・塗装 | △ | 表面処理、プライマー、接着剤選定により対応できる。 | 結晶性、表面状態、添加剤、離型剤、残留応力に注意する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥温度 | 120〜170℃程度 | グレード、乾燥機、初期含水率により異なる。除湿乾燥が望ましい。 |
| 予備乾燥時間 | 4〜6時間程度 | 乾燥不足では加水分解により分子量が低下する。 |
| 目標水分率 | 0.005%以下を目安 | 射出・押出では特に重要である。メーカー推奨値を優先する。 |
| シリンダー温度 | 260〜290℃程度 | 滞留時間が長いと熱劣化、アセトアルデヒド発生、着色の原因となる。 |
| 金型温度 | 20〜40℃程度、又は100〜140℃程度 | 透明品では低温金型、結晶化品やGF強化品では高温金型が使われる場合がある。 |
| 成形収縮率 | 約0.2〜2.0% | 無充填、GF強化、結晶化度、流動方向により大きく変わる。 |
| 乾燥管理 | 必須 | PETは吸水率自体はPAほど大きくないが、溶融時の加水分解感受性が高いため乾燥管理が重要である。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 非強化PET | GF30%強化PET | CF強化PET代表例 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度・比重 | g/cm3 | 約1.33〜1.40 | 約1.55〜1.70 | 約1.40〜1.55 | 結晶化度、充填材、再生材、添加剤により変動する。 |
| 引張強さ | MPa | 約50〜80 | 約100〜180 | 約120〜200 | 射出成形品、フィルム、繊維、延伸状態で大きく異なる。 |
| 伸び | % | 約20〜300 | 約2〜5 | 約1〜3 | 延伸、結晶化、強化繊維配合で低下する。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 約2.0〜3.0 | 約7〜12 | 約8〜16 | GF、CF強化により大幅に上昇する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 約2〜8 | 約4〜12 | 約3〜10 | ノッチ有無、結晶化度、改質剤、繊維配向で変動する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 約70〜90 | 約200〜240 | 約200〜250 | 荷重条件、結晶化度、強化繊維量により大きく変わる。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約70〜80 | 約70〜80 | 約70〜80 | 非晶部の運動性に関係する。 |
| 融点 | ℃ | 約250〜260 | 約250〜260 | 約250〜260 | 共重合成分により低下することがある。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 約80〜120 | 約120〜150 | 約120〜160 | 荷重、空気中、湿熱、電気用途、規格評価により異なる。 |
| 吸水率 | % | 約0.1〜0.5 | 約0.1〜0.3 | 約0.1〜0.3 | PAより低いが、成形前乾燥と加水分解には注意が必要である。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1017程度 | 1013〜1016程度 | 導電グレードでは低下 | 吸湿、添加剤、難燃剤、充填材、導電フィラーにより変動する。 |
| 酸素指数 | % | 約21〜23 | 約22〜25 | グレードによる | 一般グレードは自己消火性が高い材料ではない。難燃グレードは別評価が必要である。 |
| UL94 | 等級 | HB相当が多い | HB〜V-0相当グレードあり | グレードによる | 厚み、色、難燃剤、メーカー認証により異なる。 |
上記の数値は代表値又は目安である。実際の設計では、メーカーのグレード別データシート、成形条件、試験片状態、乾燥状態、温度、湿度、荷重、薬品接触条件を確認する必要がある。
耐薬品性
PETは一般に、油、脂肪酸、アルコール、希酸、食品成分に対して比較的安定である。一方、エステル結合を持つため、強アルカリ、高温水、蒸気、アミン類、加水分解を促進する条件では劣化しやすい。耐薬品性は、結晶化度、分子量、グレード、残留応力、温度、濃度、接触時間、荷重により変化する。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸、クエン酸 | ○ | 希酸では比較的良好であるが、高濃度酸、高温、長時間では加水分解や表面劣化を確認する。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸混液 | × | 酸化分解、エステル結合の劣化、着色、脆化のリスクが高い。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アルカリ洗剤 | △〜× | PETはアルカリ加水分解を受けやすい。高温、高濃度、長時間では不適となる場合が多い。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 常温短時間では比較的安定であるが、応力下、高温、長時間では白化や寸法変化を確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 分子量、極性、温度により膨潤や表面変化が起こる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △ | 常温短時間では大きな溶解が起こりにくい場合があるが、応力割れ、膨潤、白化に注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的良好であるが、燃料油、添加剤、温度条件により確認が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | △〜× | 膨潤、白化、応力割れに注意する。シクロヘキサノンなど高沸点ケトンは条件により影響が大きい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △ | SP値が近いものがあり、膨潤や応力割れを確認する必要がある。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤、白化、溶解、応力割れのリスクが高い。洗浄用途では原則として注意が必要である。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ○〜△ | 常温水では比較的安定であるが、高温水、蒸気、長時間では加水分解を確認する。 |
| 油 | 植物油、動物油、鉱物油、潤滑油 | ○ | 一般に比較的良好であるが、酸化油、添加剤、界面活性剤、温度条件を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | △ | 燃料成分、芳香族分、アルコール分、添加剤により膨潤や応力割れが変わる。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、アルカリ洗剤、食品工場用洗浄剤 | ○〜× | 中性では比較的安定な場合が多いが、強アルカリ洗浄、高温洗浄、長時間浸漬では不適となることがある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | 代表SP値 δ MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | 約21.5〜23.5 | 結晶化度、分子量、共重合成分、延伸状態、測定・推算法により変動する。 |
| 非晶性PET | 約21.5〜23.0 | 透明シート、ボトルプリフォームなどで参考となる。 |
| 結晶性PET | 約22.0〜24.0 | 結晶化により溶剤の拡散が抑えられ、実耐性が高く見える場合がある。 |
| GF強化PET | 約21.0〜23.5 | 樹脂相のSP値が支配的であるが、GF、カップリング剤、難燃剤の影響を受ける。 |
SP値は溶解・膨潤の目安として有用であるが、PETの耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。PETでは、結晶化度、ガラス転移温度、溶剤拡散、薬品の加水分解性、pH、温度、応力、接触時間、成形時の残留応力が重要である。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
PETの代表SP値を約22.5MPa1/2として、代表溶剤とのSP値差を整理すると以下のようになる。ただし、PETは結晶性ポリエステルであるため、SP値差が小さくても常温短時間では溶解しにくい場合がある。一方で、強アルカリ、高温水、アミン、塩素系溶剤、応力下ではSP値差だけでは危険性を評価できない。
| 薬品名 | 代表SP値 | PETとの差 | SP値上の目安 | 実用上の評価 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 約47.9 | 約25.4 | ◎ | 常温では比較的良好。ただし高温水、蒸気、長時間では加水分解に注意する。 |
| エタノール | 約26.0 | 約3.5 | △ | 常温短時間では○の場合が多いが、応力下では確認が必要である。 |
| IPA | 約23.5 | 約1.0 | × | SP値は近いが、常温短時間では比較的安定な場合がある。応力割れ評価が必要である。 |
| アセトン | 約20.0 | 約2.5 | △ | 白化、膨潤、応力割れに注意する。 |
| MEK | 約19.0 | 約3.5 | △ | 応力下、長時間接触では注意が必要である。 |
| 酢酸エチル | 約18.6 | 約3.9 | △ | 膨潤、白化、応力割れを確認する。 |
| トルエン | 約18.2 | 約4.3 | △ | 常温短時間では大きな溶解は起こりにくい場合があるが、応力割れに注意する。 |
| キシレン | 約18.0 | 約4.5 | △ | 温度上昇、長時間接触、残留応力で評価が悪化する場合がある。 |
| ヘキサン | 約14.9 | 約7.6 | ○ | 比較的良好であるが、燃料成分や添加剤を含む場合は確認する。 |
| ジクロロメタン | 約20.2 | 約2.3 | △ | 実用上は×に近い。膨潤、白化、溶解、応力割れのリスクが高い。 |
| クロロホルム | 約19.0 | 約3.5 | △ | 実用上は不適となる場合が多い。 |
| グリセリン | 約33.8 | 約11.3 | ◎ | 一般に比較的良好であるが、高温、長時間では確認する。 |
| 水酸化ナトリウム水溶液 | 混合系 | 単純比較不可 | 判定不可 | アルカリ加水分解により不適となる場合が多い。濃度、温度、時間を必ず確認する。 |
製法
PETは、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールの重縮合により製造される。 直接エステル化法とエステル交換法があり、重縮合により高分子量化される。

| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | テレフタル酸又はジメチルテレフタレートとエチレングリコールを主原料とする。 | 高純度原料、触媒、末端基、分子量管理が物性に影響する。 |
| エステル化法 | テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化し、ビスヒドロキシエチルテレフタレートを経由して重縮合する。 | 水を副生成物として除去しながら反応を進める。 |
| エステル交換法 | ジメチルテレフタレートとエチレングリコールをエステル交換し、メタノールを除去して重縮合する。 | メタノール回収、触媒管理、副反応抑制が必要である。 |
| 溶融重縮合 | 高温、減圧下でエチレングリコールを除去しながら分子量を上げる。 | 熱劣化、着色、アセトアルデヒド生成、末端カルボキシル基量を管理する。 |
| 固相重合 | ペレットを融点以下で加熱し、分子量をさらに高める。 | ボトル用途や高強度用途ではIV値向上に用いられる。 |
| ペレット化 | 溶融押出後、ストランドカット又は水中カットでペレット化する。 | 含水、粉、異物、色調、IV値を管理する。 |
| コンパウンド | GF、CF、難燃剤、結晶核剤、耐熱安定剤、着色剤、滑剤、耐候剤を配合する場合がある。 | 添加剤により食品接触、電気特性、機械特性、リサイクル性が変わる。 |
代表的な反応式
| 製法 | 基本反応式 |
|---|---|
| テレフタル酸法 | n HOOC−C6H4−COOH + n HO−CH2−CH2−OH → [−O−CH2−CH2−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n H2O |
| DMT法 | n CH3OOC−C6H4−COOCH3 + n HO−CH2−CH2−OH → [−O−CH2−CH2−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n CH3OH |
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 電装部品、コネクタ、センサー部品、ランプ周辺部品、フィルム、繊維部材 | 耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性、機械強度 | GF強化品では反り、熱履歴、湿熱、難燃規格を確認する。 |
| 電気・電子 | コネクタ、リレーケース、スイッチ部品、絶縁フィルム、モーター絶縁材 | 絶縁性、耐熱性、寸法安定性、難燃グレードの選択肢 | UL94、CTI、RTI、難燃剤、アウトガスを確認する。 |
| 機械部品 | ギア、軸受、スライダー、搬送部品、切削板材 | 剛性、耐摩耗性、寸法安定性 | 摺動用途ではPOM、PA、PBT、PTFE系材料との摩耗比較が必要である。 |
| 医療 | 医療包装、透明容器、フィルム、検査用部材 | 透明性、清潔性、包装性、ガスバリア性 | 滅菌方法、抽出物、規格適合、薬液接触を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 飲料ボトル、食品トレー、包装フィルム、調味料容器 | 透明性、食品接触実績、ガスバリア性、軽量性 | 食品衛生法、FDA、EU規則、熱水洗浄、アルカリ洗浄を確認する。 |
| 建築・設備 | 化粧フィルム、断熱材用フィルム、透明シート、照明カバー | 透明性、寸法安定性、耐候処方の選択肢 | 屋外用途では紫外線、熱、加水分解、黄変を確認する。 |
| 包装 | ボトル、ブリスター、ラミネートフィルム、トレー、シュリンクラベル | 透明性、強度、ガスバリア性、リサイクル性 | ヒートシール性、層構成、リサイクル適性、内容物との相互作用を確認する。 |
| 繊維 | 衣料、産業資材、ベルト、不織布、フィルター | 強度、耐摩耗性、寸法安定性、速乾性 | 染色、加水分解、アルカリ処理、熱収縮を確認する。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの制限物質 | 樹脂本体だけでなく、難燃剤、着色剤、再生材、添加剤を確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録・届出対象物質 | 輸出先、用途、添加剤、顔料、難燃剤の確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験 | 食品接触用途では、グレード単位で適合確認を行う。 |
| FDA | 食品接触用途での米国規制適合 | メーカーの適合証明、使用条件、温度、食品種類を確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌適性、抽出物、USP、ISO 10993など | 一般PETと医療グレードは同一視しない。用途別の規格確認が必要である。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、RTI、CTI | 厚み、色、成形条件、ロット、認証番号を確認する。 |
| リサイクル材 | 食品接触適合、異物、臭気、色調、IV値、トレーサビリティ | 再生PETは用途制限がある場合があり、認証と規制確認が重要である。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨されるPET系材料 | 選定理由 | 比較候補 |
|---|---|---|---|
| 飲料ボトル | ボトル用PET | 透明性、延伸ブロー性、ガスバリア性、食品接触実績 | PE、PP、ガラス、アルミ |
| 透明シート・トレー | 非晶性PET、PETG | 透明性、熱成形性、食品包装適性 | PP、PS、PVC、PC |
| 絶縁フィルム | 二軸延伸PETフィルム | 絶縁性、寸法安定性、耐熱性、薄膜強度 | PI、PEN、PPSフィルム |
| コネクタ | GF強化難燃PET | 高剛性、寸法安定性、難燃性、電気特性 | PBT、PA66、LCP、PPS |
| ギア・軸受 | 摺動PET、GF強化PET | 剛性、寸法安定性、耐摩耗性 | POM、PA、PBT、PTFE系材料 |
| チューブ | 押出用PET、共重合PET | 透明性、耐薬品性、剛性 | PE、PP、PA、PFA |
| 筐体 | GF強化PET、難燃PET | 剛性、耐熱性、寸法安定性 | PC、PBT、ABS、PC/ABS |
| フィルム | 二軸延伸PET | 透明性、強度、寸法安定性、バリア性 | PPフィルム、PAフィルム、PENフィルム |
注意点
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 加水分解 | エステル結合を持つため、乾燥不足で溶融成形すると分子量が低下する。高温水、蒸気、強アルカリでも加水分解が進む。 | 成形前乾燥、乾燥機管理、湿熱試験、IV値管理を行う。 |
| 応力割れ | 溶剤、洗剤、アルコール、ケトン、芳香族溶剤が残留応力部に接触すると白化やクラックが生じる場合がある。 | アニール、低応力設計、薬品浸漬試験、実液評価を行う。 |
| 吸湿 | PAほど吸水率は高くないが、成形時には微量水分でも加水分解の原因となる。 | 除湿乾燥、ホッパードライヤー、露点管理を行う。 |
| 熱劣化 | 高温滞留で着色、分子量低下、アセトアルデヒド発生が起こる。 | 滞留時間短縮、適正温度設定、パージ、熱安定剤の確認を行う。 |
| アウトガス | 高温成形、乾燥不良、添加剤、再生材により揮発成分や臭気が問題となる場合がある。 | 成形条件、乾燥条件、再生材比率、GC-MSや臭気評価を確認する。 |
| 結晶化・白化 | 熱履歴や成形条件により結晶化が進み、透明性低下や寸法変化が起こる。 | 冷却条件、共重合グレード選定、PETG使用、熱履歴管理を行う。 |
| リサイクル材のばらつき | IV値、色調、異物、異種樹脂混入、臭気、食品接触適合が変動する。 | 受入検査、ロット管理、用途制限、トレーサビリティ確認を行う。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 結晶性芳香族ポリエステル系エンプラであり、射出成形性、電気特性、寸法安定性に優れる。 | PBTはPETより結晶化速度が速く、射出成形部品に使いやすい場合が多い。PETはボトル、フィルム、繊維用途で特に実績が大きい。 |
| PETG樹脂 | グリコール変性した透明コポリエステルであり、透明性、耐衝撃性、熱成形性に優れる。 | PETGは結晶化しにくく熱成形性が良いが、結晶性PETほどの耐熱性や耐薬品性は得にくい場合がある。 |
| GF強化ポリエチレンテレフタレート | PETにガラス繊維を配合し、剛性、強度、HDT、寸法安定性を高めた材料である。 | 通常PETより高剛性、高耐熱であるが、透明性は失われ、反り、異方性、乾燥条件に注意する。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる非晶性エンプラである。 | PCは耐衝撃性と耐熱性で有利な場合が多い。PETは耐薬品性、ガスバリア性、包装用途、リサイクル性で有利な場合がある。 |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量、低吸水、耐酸・耐アルカリ性、成形性、コストに優れる汎用プラスチックである。 | PPは軽量でアルカリに強いが、PETは透明性、剛性、ガスバリア性、寸法安定性で有利な場合がある。 |
| ポリエチレン(PE) | 軽量、耐水性、耐薬品性、低温特性に優れるポリオレフィンである。 | PEは酸・アルカリ・水に強く柔軟である。PETは剛性、透明性、耐熱性、ガスバリア性で有利な場合がある。 |
| ナイロン6(PA6) | 機械的強度、耐摩耗性、靭性に優れるポリアミドである。 | PA6は靭性や耐摩耗性で有利な場合があるが、吸水による寸法変化が大きい。PETは吸水が少なく、寸法安定性とフィルム・ボトル用途で有利である。 |
| ポリアセタール(POM) | 低摩擦、耐摩耗性、剛性、疲労特性に優れる結晶性エンプラである。 | POMはギア、軸受、摺動部品で有利な場合が多い。PETは透明性、フィルム性、バリア性、食品包装用途で有利である。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東レ株式会社 | ルミラー、トレコンなど | PETフィルム、PBT/PET系エンプラなどで実績を持つ日本の大手化学メーカーである。 |
| 帝人株式会社 | テトロン、帝人テトロンなど | ポリエステル繊維、フィルム、樹脂関連材料で実績を持つ。 |
| 三菱ケミカル株式会社 | ノバペックスなど | PET樹脂、シート、フィルム、関連樹脂材料で実績を持つ。 |
| 東洋紡株式会社 | コスモシャイン、エスペットなど | PETフィルム、機能性フィルム、ポリエステル系材料で実績を持つ。 |
| ユニチカ株式会社 | エンブレット、エリーテルなど | ポリエステルフィルム、繊維、樹脂関連材料を扱う。 |
| Indorama Ventures | 代表例:PET樹脂、ポリエステル繊維関連製品 | 世界的なPET・ポリエステル関連メーカーの一つである。 |
| Alpek | 代表例:PET樹脂、ポリエステル関連製品 | 包装、ボトル、繊維用途向けのPET関連事業を持つメーカーである。 |
| Celanese | Impetなど | エンジニアリング用途向けPETコンパウンドを扱う代表的メーカーの一つである。 |
| BASF | Petraなど | 強化PETコンパウンド、再生PET系材料などの実績を持つ。 |
関連キーワード
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