エチレンプロピレンジエンゴム

概要

材料名エチレンプロピレンジエンゴム
略記号EPDM、EPT
英語名Ethylene Propylene Diene Monomer Rubber
4,7-Methano-1H-indene, 3a,4,7,7a-tetrahydro-, polymer with ethene and 1-propene
IUPACEthene;prop-1-ene;tricyclo[5.2.1.02,6]deca-3,8-diene
日本語名エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合物
分類合成ゴム、非極性エラストマー、オレフィン系ゴム
構造・主成分エチレン、プロピレン、少量の非共役ジエンを共重合した三元共重合ゴムである。
主な用途自動車用ウェザーストリップ、ホース、シール材、ガスケット、防水シート、電線被覆、建材用パッキンなどである。

エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレン、プロピレン、少量のジエン成分を共重合した合成ゴムである。主鎖が飽和炭化水素骨格に近くポリマー主鎖に二重結合がないため、加水分解することがなく、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、水・蒸気に対する安定性に優れる。

分子間力が低いため、フィラーを高充填することが出来るため、カーボンブラックやシリカなどを添加して強度を向上させることが出来る。

一方で、鉱物油、ガソリン、芳香族炭化水素、塩素系溶剤には弱く、油・燃料系の用途ではニトリルゴムフッ素ゴムとの比較が必要である。

特徴

  • 耐候性、耐オゾン性、耐紫外線性に優れる。
  • 水、温水、蒸気、弱酸、弱アルカリ、アルコール、ブレーキ液、リン酸エステル系作動油に比較的強い。
  • 電気絶縁性、低温柔軟性、圧縮永久ひずみ特性に優れる。
  • 非極性ゴムであるため、鉱物油、ガソリン、灯油、トルエン、キシレン、塩素系溶剤では膨潤しやすい。
  • 硫黄加硫、過酸化物加硫、樹脂加硫などにより物性が変化する。
  • グレード、エチレン含有率、ジエン種、充填材、可塑剤、加硫条件により硬さ、伸び、耐熱性、耐薬品性が変化する。
  • 175°Cまでの耐熱性
  • 低温柔軟性
  • 圧縮下の弾性特性
  • 高フィラー充填時の優れた物性
  • 優れた電気絶縁性
  • 比抵抗
  • 損失係数
  • EPDMの耐薬品性については、エラストマーの流体適合性及びエラストマーの耐薬品性を参照
長所
  • 屋外使用に適した耐候性と耐オゾン性を持つ。
  • 水系流体、温水、蒸気、弱酸、弱アルカリに対して安定しやすい。
  • 低温から中高温までゴム弾性を維持しやすい。
  • 比較的安価で、押出、カレンダー、圧縮成形、射出成形に対応できる。
短所
  • 油、燃料、芳香族溶剤、塩素系溶剤には不適である。
  • 接着性や塗装性は高くなく、表面処理や専用接着剤が必要になる場合がある。
  • ゴム配合により性能差が大きく、単純な材料名だけでは選定しにくい。
  • 高温油、燃料、強酸化性薬品では劣化や膨潤に注意が必要である。

構造式

EPDMは、エチレン単位、プロピレン単位、少量の非共役ジエン単位からなる三元共重合体である。ジエン成分にはENB、DCPD、1,4-ヘキサジエンなどが使われる。

エチレン単位        プロピレン単位        ジエン単位
-CH2-CH2-    -CH2-CH(CH3)-    -ジエン由来の側鎖二重結合-

基本構造:
-[CH2-CH2]m-[CH2-CH(CH3)]n-[ジエン単位]p-

主鎖は飽和炭化水素骨格に近く、ジエン由来の二重結合は主に側鎖に存在する。この構造により、天然ゴムやSBRより耐オゾン性、耐候性、耐熱老化性に優れる。

種類

標準EPDM
種類の名称標準EPDM
構成エチレン、プロピレン、少量ジエンを主成分とする一般グレードである。
特徴耐候性、耐オゾン性、耐水性、電気絶縁性のバランスに優れる。
主な用途自動車用シール、建材パッキン、一般ガスケット、ホースなどである。
特徴
  • 最も一般的なEPDMである。
  • 屋外用ゴム部品、水系流体用シール材に使いやすい。
耐熱EPDM
種類の名称耐熱EPDM
構成過酸化物加硫、耐熱配合、老化防止剤などで耐熱性を高めたグレードである。
特徴熱老化、圧縮永久ひずみ、温水、蒸気に対する安定性を高めた材料である。
主な用途ラジエーターホース、温水ホース、蒸気用パッキン、設備用シール材である。
難燃EPDM
種類の名称難燃EPDM
構成難燃剤、無機充填材、カーボンブラックなどを配合したグレードである。
特徴標準EPDMより燃焼性を抑えた材料であるが、機械特性や柔軟性は配合により変化する。
主な用途電線被覆、建材、車両部材、設備部材などである。
発泡EPDM
種類の名称発泡EPDM
構成EPDMを発泡させ、軽量性、柔軟性、シール性を持たせたグレードである。
特徴圧縮変形に追従しやすく、気密、水密、緩衝用途に適する。
主な用途ドアシール、窓枠シール、建材目地材、防振材、緩衝材である。
長所
  • 耐候性、耐オゾン性、耐水性が高い。
  • 配合設計により硬さ、伸び、圧縮永久ひずみ、難燃性を調整できる。
  • 発泡体、シート、押出材、成形品など形状展開が広い。
短所
  • 油、燃料、芳香族溶剤には適さない。
  • 高温・高濃度薬品では配合確認が必要である。
  • 発泡品は液体浸透、圧縮永久ひずみ、表面劣化に注意する必要がある。
成形加工
加工方法適正特徴・注意点
押出成形ウェザーストリップ、ホース、チューブ、シール材に多い。連続加硫と組み合わせる。
圧縮成形ガスケット、パッキン、厚物ゴム部品に適する。
射出成形量産部品に適する。加硫条件、流動性、金型温度の管理が重要である。
カレンダー加工シート、膜材、防水シートに使用される。
発泡加工独立気泡、連続気泡、密度、圧縮率によりシール性が変わる。
接着・貼り合わせ非極性で接着しにくいため、表面処理、プライマー、専用接着剤が必要である。

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準EPDM耐熱EPDM発泡EPDM備考
密度g/cm31.05〜1.301.10〜1.350.10〜0.80充填材、発泡倍率により大きく変化する。
硬さShore A40〜8060〜8010〜50シール用途では50〜70程度が多い。
引張強さMPa7〜1810〜180.3〜5配合、加硫条件、発泡倍率により変化する。
破断伸び%150〜600150〜40080〜300柔軟配合では高伸びとなる。
引裂強さkN/m10〜4010〜351〜10カーボンブラック配合で高くなる。
圧縮永久ひずみ%20〜6015〜4520〜70温度、時間、加硫系により変化する。
使用温度範囲-50〜120-40〜150-40〜100短時間ではさらに高温に耐える配合もある。
ガラス転移温度-55前後-55前後-55前後低温柔軟性に寄与する。
体積抵抗率Ω・cm1012〜10151012〜10151010〜1014カーボンブラック量により低下する。
耐候性なし○〜◎EPDMの代表的長所である。
耐油性なし×××鉱物油、燃料油には不適である。

耐薬品性

EPDMの耐薬品性は、水、温水、蒸気、弱酸、弱アルカリ、アルコール、ケトン、リン酸エステル系作動油に比較的良好である。一方で、鉱物油、ガソリン、灯油、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では膨潤や劣化が起こりやすい。

薬品・溶剤耐性備考
常温水、温水に良好である。
蒸気○〜◎耐熱配合では比較的良好である。高温長期では圧縮永久ひずみに注意する。
弱酸○〜◎多くの無機酸に比較的安定である。
強酸△〜○濃度、温度、酸化性により劣化する場合がある。
弱アルカリ○〜◎比較的良好である。
強アルカリ常温では比較的良好であるが、高温・高濃度では確認が必要である。
アルコールメタノール、エタノールなどには比較的良好である。
ケトン△〜○アセトン、MEKでは配合により膨潤する場合がある。
エステル酢酸エチルなどでは膨潤、抽出に注意する。
鉱物油×EPDMの代表的な弱点であり、油中では膨潤しやすい。
ガソリン・灯油×燃料系用途には不適である。
芳香族炭化水素×トルエン、キシレンでは膨潤・軟化しやすい。
塩素系溶剤×ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどでは不適である。
オゾン天然ゴムやSBRより耐オゾン性に優れる。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照

SP値(溶解度パラメータ)
項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
EPDM 標準16.0〜16.5 非極性ゴムであり、炭化水素系溶剤に近いSP値を示す。芳香族・脂肪族炭化水素では膨潤しやすい。
EPDM 耐熱配合16.0〜16.8過酸化物加硫や耐熱配合でもポリマー骨格のSP値は大きく変わらない。
EPDM カーボンブラック配合16.2〜17.0充填材により見掛けの膨潤挙動は変化するが、油・燃料への弱さは残る。
EPDM 発泡体16.0〜16.8発泡構造では液体が浸透しやすい場合があるため、SP値だけでなく気泡構造を確認する。
EPDM 難燃配合16.5〜18.0無機充填材、難燃剤、可塑剤により見掛けの耐溶剤性が変わる。
溶解性の目安
Δδ挙動目安
0〜2溶解・膨潤しやすいSP値が近く、溶剤が樹脂中に浸透しやすい。
2〜5膨潤・白化・軟化に注意短時間では使用できる場合があるが、応力や温度に注意する。
5以上溶解しにくいSP値差は大きいが、加水分解や化学反応は別途確認が必要である。
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)
MPa1/2
EPDMとの
SP値差
評価備考
47.9 31.6SP値差が大きく、EPDMは水、温水、蒸気に比較的強い。
メタノール29.613.3短期では良好であるが、配合品では抽出や硬化に注意する。
エタノール26.09.7アルコール類には比較的良好である。
アセトン20.03.7短時間では使用できる場合があるが、膨潤、抽出、硬度変化に注意する。
MEK19.02.7SP値が近く、膨潤の可能性がある。
酢酸エチル18.62.3エステル系溶剤では配合により膨潤する場合がある。
ヘキサン14.91.4×非極性炭化水素であり、EPDMと相性が近く膨潤しやすい。
シクロヘキサン16.80.5×SP値が非常に近く、膨潤が大きくなりやすい。
トルエン18.21.9×芳香族炭化水素であり、膨潤・軟化に注意が必要である。
キシレン18.01.7×芳香族溶剤であり、EPDMには不適である。
ガソリン14〜16 程度0〜2程度×燃料油系では膨潤しやすく、EPDMは基本的に不適である。
鉱物油16〜18 程度0〜2程度×油用途ではNBRFKMなどを検討する。
ジクロロメタン20.23.9×塩素系溶剤では膨潤、劣化、抽出に注意が必要である。

評価基準:◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

上表はEPDMのSP値中央値16.3 MPa1/2を基準にした目安である。特にヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ガソリン、灯油、鉱物油、塩素系溶剤では膨潤・軟化・物性低下が起こりやすいため注意が必要である。

製法

EPDMは、エチレン、プロピレン、少量の非共役ジエンを、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などで共重合して製造する。ジエン成分は主鎖外に反応点を与え、加硫によりゴム弾性を発現する。

基本反応式

m CH2=CH2 + n CH2=CHCH3 + p 非共役ジエン
→ -[CH2-CH2]m-[CH2-CH(CH3)]n-[ジエン単位]p-

加硫反応の概念

EPDM中のジエン由来反応点 + 硫黄又は過酸化物
→ 架橋EPDM

硫黄加硫では加工性と一般物性のバランスが良い。過酸化物加硫では耐熱性、圧縮永久ひずみ、抽出性を改善しやすい。

詳細な利用用途

分野用途例選定理由
自動車ウェザーストリップ、ドアシール、ラジエーターホース、ブレーキ系部材耐候性、耐オゾン性、耐水性、低温柔軟性に優れる。
建築・土木防水シート、屋根材、目地材、窓枠パッキン屋外暴露、紫外線、雨水、オゾンに強い。
電気・電子電線被覆、絶縁材、ケーブルシース電気絶縁性、耐候性、柔軟性に優れる。
設備・配管水系配管パッキン、温水ホース、蒸気ホース、ガスケット水、温水、蒸気、弱酸、弱アルカリに比較的良好である。
生活用品スポンジゴム、緩衝材、シールテープ、マット柔軟性、耐候性、コストバランスに優れる。

関連材料との比較

比較材料特徴EPDMとの違い主な選定ポイント
天然ゴム高弾性、高強度、耐摩耗性に優れる。EPDMの方が耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性に優れる。屋外用途はEPDM、機械的強度重視は天然ゴムを検討する。
SBR汎用合成ゴムで、耐摩耗性と価格バランスが良い。EPDMの方が耐候性、耐オゾン性、水系流体への適性が高い。タイヤ・摩耗用途はSBR、屋外シールはEPDMを検討する。
ニトリルゴム耐油性、耐燃料性に優れる。EPDMは油・燃料に弱いが、耐候性・耐水性は良好である。油用途はNBR、水・屋外用途はEPDMを検討する。
クロロプレンゴム耐候性、難燃性、耐油性のバランスが良い。EPDMの方が耐オゾン性、水・蒸気に優れる場合が多い。難燃性や油も必要な場合はCRを検討する。
フッ素ゴム耐熱性、耐油性、耐薬品性に非常に優れる。FKMは高価だが油・燃料・高温薬品に強い。EPDMは水・蒸気・屋外用途に適する。燃料・油・高温薬品はFKM、コストと耐候性重視はEPDMである。
熱可塑性エラストマー射出成形性、リサイクル性に優れる。EPDMは加硫ゴムとして耐候性、圧縮永久ひずみ、ゴム弾性に優れる場合が多い。量産成形性はTPE、長期シール性はEPDMを検討する。

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・特徴備考
三井化学EPT系グレード自動車、工業用ゴム、電線、建材用途で使用される。
住友化学EPDM系材料オレフィン系材料技術を基盤とする。
JSR合成ゴム関連材料ゴム・エラストマー材料の代表的メーカーである。
DowNORDEL系EPDMメタロセン系を含むEPDMグレードを展開する。
ExxonMobilVistalon系EPDM自動車、建材、電線、工業用途向けグレードがある。
ARLANXEOKeltan系EPDM自動車、建築、電線、ホース用途で使用される。
ENI VersalisDutral系EPDM工業用ゴム、シール、ホース、電線用途に使われる。

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